ウサギまみれになりたくて〜大久野島 ②


大久野島で「うさぎだまり」を作るのは、さほど難しいことではない。立ち止まるだけで、ウサくんたちが突進してきて「おねだり」をする。クレクレタコラあるいはギブミーチョコレートさながら、しまいには「もうええわ」と辟易するほどに、ウサくんたちは訪れる人の足元に寄ってくるのである。







そうして見ていくと、『シートン動物記』にあった「ぎざ耳うさぎ」というのは、さほど珍しくもないことに気づく。うさぎの楽園である大久野島の、けっこうな数のウサくんが「ぎざ耳」である。仲間内で縄張り争いでもしているのかもしれない。



そして耳だけでなく、しばしば片目を潰されているウサくんにも遭遇する。おそらく、カラスやトンビが、ウサくんの目を狙ってくるのだろう。かけ寄ってきた仔ウサたちが、「カー」とカラスの声を聴くやいなや、一目散に逃げてしまう光景もあった。自然は弱いものからいのちを刈り取っていく。特にちいさな仔ウサともなると、カラスやトンビに狙われ易かろう。


うさぎが可愛いのは当たり前だ。人間はこの可愛さにメロメロになって、つい可愛いコばかりを溺愛してしまう。可愛いコに何かしてあげたくなるのは自然なことだ。だから、可愛いコは放っておいても、誰彼なく愛情を注ぎ、エサを与え、甘やかして、可愛いコは生きていける。
ゆえに、可愛くないコが気掛かりになる。私は、片目を潰された、あるいはハデな「ぎざ耳」の、苦労の多そうな子に注目してみた。可愛いうさぎと戯れることを目論んで来る観光客の顰蹙をかい、真っ先に来て「おねだり」ポーズをしても、後から可愛いコに押し退けられ、うさぎだまりの周縁に追い出されてしまう可愛くないコが、可愛いコが貰える分け前と見劣りしない程度に、分け前を得られるように。と、そんな気持ちが湧くのも、可愛いコに何かしてあげたくなるのと同様に、自然なことなのだろう。

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